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「……お兄ちゃん。」

驚いた。校内で話しかけられたことなんて、なかったからだ。兄は私と兄妹だと知られることを、極端に嫌っていた。


『どうせ、浩一だろ?いいかげんお前もやめれば。』

図書室の机に軽く腰をかけ、目を細めて私をじっと睨む。

「っ、そんなの。お兄ちゃんには関係ない。」


私は、下を向いて眼鏡を直す兄を負けじと睨む。

チッと舌打ちをし、

『関係ないとか、そういうのじゃない。あいつだって、お前に縛られて、彼女とだって、そこらの女と遊びにだっていけないんだぞ?お前、わかってんのかよ。』



「勝手に縛られてる、とか。そんなの言わないでよ。」

私だって縛りたくない。

だけど。知らない女の人と先輩が肩を並べて歩いてる姿なんて想像したくもないし、耐えられない。

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