いいから私の婿になれ
ご主人様はネトゲ廃人
淀んだ空気が沈殿する、薄暗く湿った灰色の壁の建物。

その一室。

彼女は手にした得物を両手でしっかりと握り締める。

身の丈よりも長い柄の、巨大な戦斧。

大振りに振り下ろす事で硬い甲殻を持つ魔物をも両断できる、生粋の戦士向けの武具だ。

本来ならば彼女のような華奢な体の女性には不向きなシロモノ。

だが彼女はそれを携えたまま、眼前の敵に視線を向ける。

…犬だった。

三つ首の巨大な犬。

ケルベロスと呼ばれる魔獣。

地獄の番犬とも渾名され、冥府の底から逃亡する者を噛み殺すという残虐極まりない魔物だった。

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