いいから私の婿になれ
どこか新たな癒し空間を求めて。

不本意ながら、安くて目的にあったネットカフェを探して二人で街中を歩き回る。

相変わらずこの界隈は賑やかだ。

道行くのは何らかのコスプレをした若い女性か、それを目当てにやって来た地方のカメラ小僧が殆ど。

中には一般のサラリーマンなどもいるが、全体の何パーセントを占めているかといった状況だ。

『普通の趣味』の…と言えば語弊があるかもしれないが、真琴にとっては少々落ち着かない空間といえる。

「なんでコスプレやらネトゲやら、現実逃避したがるんやろな、こいつら」

どこか軽蔑の色を込めた言葉を吐き出す真琴。

その言葉に。

「現実逃避って悪い事か?」

特に怒るでもなく、黎児は極めてニュートラルに返答する。

「普段と違った自分になる事でストレス発散して、それでまた現実に戻って頑張れるんなら、他人にとやかく言われる筋合いはないと思うけどな。少なくとも放火したり他人を傷つけたり小動物殺してストレス発散してる連中より、よっぽど健全な趣味だと思うけどな…真琴だって少なからずそういうとこあるだろ?」

「……」

ふざけた返答が返って来ると思いきや、意外にも真面目な答えが返って来て真琴は驚きつつ。

「お前は現実逃避したままやろ」

「う゛」

尤もなツッコミを返すのだった。

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