いいから私の婿になれ
メイドさんは変わり者
通りのど真ん中。

美人メイドにしがみつかれ、黎児は衆人の注目を浴びる。

特に真琴の視線が痛い。

「あ、あのっ、ちょっと…」

胸の感触を惜しみつつ、黎児はメイドを引き剥がした。

「何かの勧誘すか?メイド喫茶の人?どっかの店のビラ配りの人?」

「いえ」

メイドは華のような可憐な微笑みを浮かべる。

「私はご主人様の専属メイドでございます」

さて困った。

どこの電波を受信しているのだろう、この人は。

「黎児、黎児…」

真琴がヒソヒソと声をかけてくる。

「何やこの人、お前の知り合いちゃうんか?」

「俺がメイド囲うような大富豪に見えるかっ」

黎児もヒソヒソと返す。

あからさまな二人の不信の眼差しにも動ずる事なく、メイドは丁寧に両手を体の前に結んで微笑を湛えていた。

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