いいから私の婿になれ
しばらくは無言の追いかけっこが続いたものの、このままでは家にまで来られかねない。

ストーカーばりの執念深さに音をあげて。

「あのっ、すいませんけどっ」

黎児は振り返った。

「はい、何でしょうかご主人様。お茶をご所望ですか?」

ぱぁっ、と華やぐような笑顔を振り撒いて告げるメイド。

その高濃度の萌えオーラに、危うく洗脳されてしまいそうになるのを堪え。

「俺は貴女に…」

「貴女などと他人行儀な呼び方はなさらないで下さいませ。どうか『エリアル』…と…呼び捨てで構いません」

そう呟き、何故かポッと頬を赤く染めるメイド、エリアル。

確かに見た目、生粋の日本人ではなさそうだが…。

「エリアル…?…源氏名か何か?」

「いえ」

恥じらいの表情から一転、エリアルは凛々しいともいえる表情に変わった。

「本名でございます。エリアル・シュバルツ・フューデンバッハ・ハインリッヒ・フォン・レクセルハイムと申します」

「長いねんっ」

思わず真琴が突っ込んだ。

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