いいから私の婿になれ
背筋を伸ばし、礼儀正しく体の前で両手を揃え、脇目も振らずに熱心に黎児へと眼差しを向けるエリアル。

「あんな黎児、提案なんやけど」

真琴が言う。

「いっその事、この人に付き合ったったらええねん」

「は?」

無責任な真琴の発言に、黎児が声を上げる。

「馬鹿言え、こんな素性の知れない萌えメイドに合わせろってのか?」

「せやかて、満更でもないんとちゃうの~?」

真琴が冷ややかな視線を向ける。

「ネトゲ廃人で引きこもりの黎児の事や、女の好みもこういう『萌え』なのがええんやろぉ?」

何故か言葉の端々に棘がある。

「だからって、こんなイタイ女を俺が連れ歩ける訳…!」

「せやったら部屋にまで連れ込んでご主人様ごっこしたらええやん?」

プイとそっぽを向いて、真琴は歩いていってしまう。

背中を向けたままヒラヒラとさせる手が、やけに突き放されたように見えた。

その背中を見つめながら。

「ご主人様」

エリアルがトーンの下がった声で呟く。

「あの者の物言い…エリアルはご主人様に対して無礼極まりないと思います」

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