いいから私の婿になれ
エリアルはその後も、幾つかの魔法をほんの触り程度見せてくれた。

電撃、吹雪、鎌鼬など。

何かのトリックなのかもしれないし、本当に魔法なのかもしれない。

神ならぬ黎児の目では、それを見破る事など出来ない。

だがただ一つ言える事。

それを人間に対して使用すれば、間違いなく殺傷してしまうレベルのものだという事だ。

「エリアル」

黎児はエリアルの両肩に手を置き、真剣な目で彼女を見る。

「俺をご主人様なんて言うんなら、お前は俺の命令聞くんだろ?」

「はい、勿論でございますご主人様」

ニコニコと微笑むエリアル。

その笑顔が無垢な反面、倫理も善悪も知らない狂気を湛えているようにも見えたのは気のせいだろうか。

「ならご主人様として命令する。『俺の許可なく魔法は使うな』…例え俺がどんなに侮辱されたとしても、傷つけられそうになったとしても、絶対に俺の許しを得ずに魔法を行使するんじゃない。それができないなら、俺はお前をメイドとしてそばに置かない。いいな?」

黎児の迫力におされたように。

「わかりました、ご主人様」

エリアルは真摯な表情で頷いた。

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