いいから私の婿になれ
「でも…」

真琴が視線を落とす。

「もうウチが女やてクラスの皆にもバレてしもたし、この学校にはおられへんな…」

「ん、まぁ…」

頭を掻きながら黎児も呟く。

こういう状況になってしまった以上、黎児もこれまで通り真琴を男としては見られなくなる。

『男子校の悪友』という接し方は出来なくなるだろう。

「でも、別にお前が女だからって口も利かなくなるって訳じゃないし、同じ学校にいられないだけで、真琴が迷惑じゃなければメールだって電話だって出来る訳だし、その…」

ヘタレの黎児は黎児なりに、真琴に感情表現する。

「まぁ…真琴可愛いと思うし」

「その『まぁ』が気に入らんっ」

膨れっ面を見せる真琴。

しかしすぐにはにかんだ笑顔を見せる。

如何にも恋愛小説的な甘々な雰囲気。

だが、そんな甘ったるい時間も長くは続かない。

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