いいから私の婿になれ
背後で足音。

黎児と真琴は咄嗟に振り向く。

「やはり尻尾を出しましたね、雌豚」

そこにはエリアルが立っていた。

光のない瞳、表情こそ笑みを浮かべているが、その瞳はまるで笑っていなかった。

「え、エリアル、何しに来たっ、留守番しとけって言っただろう?」

真琴を背後に隠れさせ、黎児が向き直る。

「ご主人様、そのご命令は聞けませんわ」

一歩、エリアルが踏み出す。

「だってその雌豚…私のご主人様に手を出したのですもの…身の程知らずにも程があります。キツイお仕置きをしてやらないと…」

「止せって言ってるだろ!」

後ずさりしながら強い口調で黎児が怒鳴る。

その言葉にエリアルは立ち止まり。

「ご主人様、まさか…」

彼女の顔から笑みが消えた。

「その雌豚に、恋愛感情を抱いておられるのですか…?」

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