いいから私の婿になれ
もうもうと上がる白煙。

一部崩落するコンクリートの壁。

鉄筋が剥き出しになり、地震でも発生したかのような破壊の爪痕が刻まれる。

「エリアルっ…!」

信じられないといった表情でエリアルを見つめる黎児。

真琴にいたっては、黎児の腕の中で青ざめて震えている。

その様子を見て。

「あぁんっ、羨ましいっ!」

エリアルは悶えるようにその身をくねらせた。

「私もご主人様の逞しい腕の中で抱き締められたいですわ。本来ならばそれは私の役目…ご主人様に身も心も捧げて尽くして、その褒美にささやかな抱擁をおねだりする…ご主人様に忠を尽くす私にのみ許される特権だった筈…なのに…」

猫科の肉食獣を彷彿とさせる切れ長の眼が、真琴を見据える。

「お前のような下賎な者が、私のご主人様の腕の中に抱かれるなんて…」

掲げられたエリアルの右手に、今度は透き通るような氷の塊が発生する。

「許し難い所業ですわ…雌豚」

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