いいから私の婿になれ
「いい顔になりましたね。それでこそ他人の主を横取りしようとした泥棒猫に相応しい顔です」

エリアルは両手を掲げる。

その両手に、黒い影のようなものが浮かび上がった。

憎悪や怨念を具現化したような、禍々しい影。

寒気のするようなその光景に、真琴が脅えて黎児にしがみつく。

「一撃死の魔法です…相手の生命力や強さに関係なく、有無を言わさず命を奪う魔法…せめてもの慈悲です、雌豚。嬲る事なくあの世へ送り届けてあげましょう」

両手一杯に溢れ返るほどの『影』を、エリアルは躊躇いもせずに投げつける!

一直線に飛んでくる黒い影。

しかし。

「下がれ真琴!」

黎児が真琴の手を引いて距離を置く事で、その影は届く事なく自然消滅した。

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