いいから私の婿になれ
「エリアル」

黎児は目の前のメイドに対して呼びかける。

「もう止そう。俺はお前に恨みがある訳じゃないんだ。お前が真琴に手を出しさえしなければ、こんな事するつもりは…」

「いいえご主人様」

黎児の言葉を遮るように、エリアルが身を起こす。

「私は恨んでおりますわ…私を捨て、そんなどこの馬の骨とも知らぬ雌豚を選ぶなんて…」

一歩、また一歩と歩み寄るエリアル。

幽気漂うようなその歩みは、戦慄さえ覚えさせる。

「ご主人様は私を弄んでいただけなのですね…私の乙女心を踏みにじっていただけなのですね…」

「違う!エリアル、誤解だ!」

「問答無用でございます!」

一体そんな巨大なものをどこから取り出したのか。

エリアルは、身の丈よりも長い柄の巨大な戦斧を両手で振り上げた。

「魔法が通用しないならば、これで雌豚共々挽き肉にして差し上げるまで!」

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