いいから私の婿になれ
今度ばかりは流石に黎児も逃げ腰になる。

無理もないだろう。

目の前でエプロンドレスを身につけたうら若き乙女が、凍てついた表情で、身の丈以上の大きさの戦斧を振りかぶっているのだ。

平和な日本…いや、平和な『この世界』ではお目にかかる事のない種類の『危険』!

「エリアル、俺はお前を捨てた訳じゃねぇよ!ただ真琴ともお前とも仲良く…」

「その優柔不断さが」

黎児の言葉を待つ事なく、エリアルは戦斧を振り下ろす!

「貴方の死を招くのです、ご主人様!」

彼女が超重兵器を持っていたから、戦闘には素人の黎児でも辛うじて回避できた。

エリアルの初撃を避けられたのは、そんな幸運でしかない。

黎児にも真琴にも掠める事なく振り下ろされた戦斧は足元の地面に深々と食い込み、それだけでは威力を殺し切れずに地面を抉り返し、周囲にその飛沫を大量に撒き散らした。

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