いいから私の婿になれ
最早走って追うまでもない。

足を引き摺るような黎児の歩みならば、いつでもエリアルは追いつける。

敢えて追い詰めるように、泳がすように、彼女はゆっくりと黎児を追った。

やがて彼は、学生寮へと辿り着く。

階段を上がった2階が、彼の部屋。

ハァハァと息を切らしながら階段を昇っていく黎児を、ジワジワと追いかけていくエリアル。

これでは逃げる意味すらないように思えた。

いっそ観念してトドメを刺された方が、余程楽になるのではないかと思える状況。

それでも黎児は諦めない。

無様とも思える姿で、自分の部屋のドアを開ける。

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