いいから私の婿になれ
光のない瞳が、黎児を見つめた。

その瞳に、もう憎悪はない。

あるのは絶望と憂いのみ。

「……押して下さいませ、ご主人様」

エリアルは呟く。

「思えば私が押しかけてきただけの話です…ここまで手塩にかけて育てて下さり、寝る間も惜しんで鍛えて下さり、私はご主人様が心の底から愛して下さっているものと思い込んでおりました…ご主人様が心血を注いでおられるのだから、きっとご主人様も私と同じようにお慕い下さっているものだと、そう信じ込んでおりました…」

白い陶磁器のような頬に、涙が伝い落ちた。

「押して下さいませ、ご主人様…ゲームとしてのデータが消える。それだけの話でございます」

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