いいから私の婿になれ
覚悟は決まっていた。

データを消される事は、エリアルにとっての死。

だがここまで主に嫌われて、メイドとしてどうして存在している意味があろうか。

ならばいっそ一思いに、存在を消される事が自分にとっても主にとっても幸せ。

…そう思っていた。

しかし。

「馬鹿言え」

黎児は言ってのける。

「俺がお前を今のレベルにするまで、一体何百時間費やしたと思ってんだ」

「「は?」」

エリアルが、真琴が。

声を揃えて言う。

「レベル上げの為に回復薬買い込んで洞窟で粘りに粘って魔物狩りまくって、レアものの装備入手する為に他のプレイヤーと取引しまくって、たまに詐欺られて身包み剥がされたりもしたし、最上位武器を作成する為に貴重な素材求めて、ネトゲ友とパーティー組んで何度も死に掛けながら迷宮の最深部まで行ったり…」

マニアックな苦労話を聞かされて、エリアルも真琴も毒気を抜かれて唖然とする。

「とにかく!」

鼻息荒く胸を張って、黎児は声を大にした。

「そう簡単にエリアルを消す訳にはいかないんだっっっ!」

< 95 / 101 >

この作品をシェア

pagetop