【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
原田さんが視線を向けている方に、あたしも目を向けてみる。
その瞬間、圧巻された…―――。
『Rainです!』
スピーカーから響く暁くんの声と歓声が重なって身体の奥を震わせる。
ステージの上ではライトに照らされた暁くんたちが、キラキラと眩しいくらいに輝いていた。
『チラシ見て来てくれた人は知ってると思うけど、この前突然ボーカルが抜けました。だから、しばらくの間は俺がボーカルとギターを務めます!ボーカル絶賛募集中!!よろしくね!』
そうして再び上がる、黄色い声。
『じゃあ1曲目、聞いてください』
と、暁くんの甘い声がスピーカーから流れ出した瞬間、会場は水をうったように一瞬で静まり返った。
カンカンカンカンッ
リズミカルに叩かれたドラムのスティックを合図に、全員がメロディーを奏で始める。
優兄の力強いドラムがリズムをとって、
李織さんの繊細なキーボードが曲を滑らかにして、
愁生さんのベースが曲を支えて。
そして。
『昨日からまた一歩 進むこと 恐れないで 今日を歩こう 今を…――――』