【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
みんなが奏でたメロディーに乗って、暁くんの甘い歌声が会場全体を包み込む。
鼓膜を振動させて、甘い疼きとなってあたしの中を駆け回った。
この場の雰囲気を一瞬で変え、見るもの全てを引き込むRainの音。
それはあたしも例外じゃなくて。
あっという間に、心を囚われた。
「―――…」
「な、すごいだろ?俺も初めて聞いた時、一瞬で引き込まれたよ。」
ふっ、と原田さんはわずかに笑みをこぼしながら言った。
「でもな、すごいのはこれだけじゃないんだ。」
えっ?
原田さんを見上げると、にぃっと口角を上げた。
「アキは本来、ギターだ。ボーカルやベースなんかやらないで、リードギターをやる方が向いてる。」
歌っても様になってるのがムカつくけどな、と付け足す原田さん。
「あいつはギターの天才だよ。俺は今まで、インディーズのギタリストでここまでの奴を見たことがない。」
天才…?