【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
そんな時、とうとう曲は間奏に差し掛かった。
ギターを構え直した暁くんが、滑らかに指を滑らせる。
…―――えっ!?
その途端、あたしは大きく目を見開いた。
暁くんはピックを器用に操り、左手は寸分の狂いもなく巧みに弦の上を滑った。
原田さんの言ったことが、よくわかる。
暁くんは、天性のギタリストだと。
「…だろ?アイツは天才なんだよ。それ以上にあいつに当てはまる言葉を、俺は知らない。」
失敗が目立つはずのギターソロで、難しい技を難なくこなし、その旋律は寸分の狂いもなく美しい。
…ああ、暁くんはこんなにすごい人だったんだね。
輝いてみえる。
ギターを弾く暁くんは、誰よりもキラキラ輝いていて、夢へ一直線。
あまりに楽しそうに弾く彼の姿を見て、あたしの胸は高鳴っていた。
これがライブによる興奮からくるものなのか、暁くんへの特別な感情によるものなのかは、正直わからない。
けど、あたしは暁くんから目を離せずにいた。