【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





そんな時、とうとう曲は間奏に差し掛かった。






ギターを構え直した暁くんが、滑らかに指を滑らせる。






…―――えっ!?





その途端、あたしは大きく目を見開いた。






暁くんはピックを器用に操り、左手は寸分の狂いもなく巧みに弦の上を滑った。







原田さんの言ったことが、よくわかる。






暁くんは、天性のギタリストだと。








「…だろ?アイツは天才なんだよ。それ以上にあいつに当てはまる言葉を、俺は知らない。」






失敗が目立つはずのギターソロで、難しい技を難なくこなし、その旋律は寸分の狂いもなく美しい。






…ああ、暁くんはこんなにすごい人だったんだね。





輝いてみえる。





ギターを弾く暁くんは、誰よりもキラキラ輝いていて、夢へ一直線。





あまりに楽しそうに弾く彼の姿を見て、あたしの胸は高鳴っていた。





これがライブによる興奮からくるものなのか、暁くんへの特別な感情によるものなのかは、正直わからない。





けど、あたしは暁くんから目を離せずにいた。







< 103 / 450 >

この作品をシェア

pagetop