【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
優兄…?
あたしが首をかしげると、昔から変わらない温かい笑顔を浮かべた優兄。
「ライブ、見に来てくれてサンキューな。今度は集まりの時に遊びに来いよ。」
いいの…?
あたしの心の声を感じ取ってくれたらしい優兄は、最後にくしゃくしゃって髪を撫で回すと、そっと身を引く。
「待ってるからさ。明日、学校帰りにここ寄れよ。」
ホントにいいのかな、とゆっくりと周りを見渡す。
そこでは、みんながそれぞれ優しい表情をしていて。
来てもいいんだと、思わせてくれた。
それがなんだかとても嬉しくて。
あたしは、うんって大きく頷いていた。
そんなあたしを見て、かすかに優兄が安堵の色を見せる。
「ごめんね、待たせちゃって。送るから、帰ろう。」
暁くんのエスコート癖にもようやく慣れ、その左手をぎゅっと握った。
手を振る皆さんに、あたしも振り返しながらライブハウスを出た。
その時すでに、空は満天の星に覆われていた。