【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





その内、足音はだんだんとあたしに迫ってる。





とうとう不良たちの荒い息づかいまでもが耳に届くようになっている。






もう…だめだぁーっ!!






そんな諦めと絶望にうちひしがれ、曲がり角を曲がったときだった。





ぐいっ!





「――!?」






突然、思いもよらない方向から腕を引っ張られてバランスを崩す。




そのまま、薄暗く細い路地へと体が引っ張り込まれた。





それは本当に突然のことで、頭も体も状況に追い付けていない。





そのまま体は大きく体勢を崩し、固いアスファルトに一直線。




の、はずだったのに。





ふわり…。




そんな効果音が聞こえてきそうなくらい優しく受け止められたと同時に、あたしを包み込む温かい体温と優しい匂い。





…え?





それが誰か、人だとわかった瞬間にぎゅっと抱き締められ、その人の存在をすぐ間近に感じた。





そうして耳元にその人の甘い吐息がかかり、背筋をゾクゾクとしたものが走り抜ける。






な、なんだろう…




ドキドキする…






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