【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






「(いつまでに帰ればいいんですか?)」




叔父さんの飄々(ひょうひょう)としたジョークに合わせることなく、事務的に答えると叔父さんもいつもの声音に戻した。





『(四日後だ。四日後の昼までに来い。取引先の重役を多く招いたパーティーをする。)』






パーティー、か。





どうせまためんどくさいことになるんだろうな。






「(…わかりました。)」






『(私を裏切るなよ、アキラ。)』






『(もちろんですよ。)』






俺がそう答えると、プツリと電話が切れた。





携帯から聞こえるのは、いやと言うほど聞き慣れた叔父の声ではなく、冷たい電子音のみ。






「…ふぅーー」






体から重たい空気を吐き出し、ドサッと椅子にもたれ掛かる。





せっかく柚と会って軽くなれたはずなのに、また重くなってしまった気がする。






「…ふぅー。ダメだなぁ、俺。」





ダッシュボードの中から煙草の箱を取りだし、一本くわえる。




火をつけようと、ライターを点火させた時だった。







…バタンッ!!






「………?」







勢いよく扉の開く音がして、俺はライターから指を離した。








< 121 / 450 >

この作品をシェア

pagetop