【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「(いつまでに帰ればいいんですか?)」
叔父さんの飄々(ひょうひょう)としたジョークに合わせることなく、事務的に答えると叔父さんもいつもの声音に戻した。
『(四日後だ。四日後の昼までに来い。取引先の重役を多く招いたパーティーをする。)』
パーティー、か。
どうせまためんどくさいことになるんだろうな。
「(…わかりました。)」
『(私を裏切るなよ、アキラ。)』
『(もちろんですよ。)』
俺がそう答えると、プツリと電話が切れた。
携帯から聞こえるのは、いやと言うほど聞き慣れた叔父の声ではなく、冷たい電子音のみ。
「…ふぅーー」
体から重たい空気を吐き出し、ドサッと椅子にもたれ掛かる。
せっかく柚と会って軽くなれたはずなのに、また重くなってしまった気がする。
「…ふぅー。ダメだなぁ、俺。」
ダッシュボードの中から煙草の箱を取りだし、一本くわえる。
火をつけようと、ライターを点火させた時だった。
…バタンッ!!
「………?」
勢いよく扉の開く音がして、俺はライターから指を離した。