【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
なんだ、それなら問題はない。
「わかった。じゃあ、どの部屋に出たの?
俺がそう尋ねた時だった。
「柚?」
どこかで聞いたことのあるような声がし、俺と柚は振り向く。
そこにいたのは、優輔そっくりな高校生くらいの男の子だった。
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バチン!!
「ふー…、もういいぞ。」
優輔そっくりな男の子、京輔くんはそう言って、退治したゴキブリを包んだ新聞紙を外のゴミ箱へと捨てに行った。
柚の家にゴキブリが出たとき、退治するのはずっと彼が引き受けていたらしい。
その甲斐あってか、ずいぶん手慣れている。
柚はと言えば、ホッとして床に座り込んでしまった。
「大丈夫かい?立てる?」
そっと声をかけると、コクリと頷いたので手を引いて立ち上がらせてあげた。
「おーい柚、喉乾いた。なんか冷たいものくんねぇ?」
そんなとき裏口から京輔くんの声が聞こえ、柚はリビングを指差してからダイニングへと消えた。
ここで待っていて、という意味と受け取っておく。