【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…あ?腹?若干すいてる。おう、じゃあそれ少しもらうよ。…味?平気だろ、気にすんな。そんなの腹に入れば一緒だ、一緒。」
なんて言う京輔くんの声がダイニングからした。
柚と何か会話しているらしいが、こちらからは見えない。
「ははっ、わりぃわりぃ。」
楽しげに笑いながらリビングに入ってきた彼。
俺と目が合うと、表情を固くしてペコリと頭を下げた。
「初めまして。京輔くん、だったね?もしかして君は、優輔の弟かな。」
「そうっす、樋下 京輔。あいつとは同い年の幼なじみ。」
「俺は桐野 暁。優輔とは同じ大学で、彼を含めた数人でバンドを組んでる。」
「…ああ、あなたが暁さんっすか。」
「へぇ、俺のこと知ってるんだ?」
「まぁ。なんでも出来る完璧人間で、女には苦労してないとか、泣かせた女は数知れずとか色々。」
「…それはひどいな。泣かせた覚えはないよ。喜ばせるのは得意だけど。」