【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
そんなとき、なんとなく視線が棚に向かう。
そこにはたくさん並べられた写真たてがあって、その中で幸せそうに笑う人々がいた。
家にはいない柚の家族の人らしい写真。
柚が小さい時の写真。
幼い優輔や京輔くんと一緒に写った写真。
そして、真ん中にあった一際大きな写真たてに目がいったとき、俺は言葉を失った。
何枚も写真を飾れるタイプのそれには、四枚の写真が納めてあって。
その中には、ステージの上でギターを弾きながらマイクに向かう柚が写っていた…。
これは、一体…。
これではまるで柚が歌っているかのようだ。
柚にも声があったのか…?
じゃあ、京輔くんが言っていた柚の過去というのはまさか…。
写真たての中心に張ってあった写真には、柚と京輔くんと知らない女の子二人が写っていて、みんなで楽しそうに笑っていた。
そこに書き込まれていた文字は、“Arice”…―――。