【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
は??
あたし何かまずいことでもした?
首をかしげると、李織さんが小さく笑ったような気がした。
李織さんはいつも眠そうで無表情だけど、女の子よりもすごく綺麗な顔をしている。
色素の薄い髪も瞳も、あまり日に当たっていなさそうな真っ白い肌も、華奢な体も女の子みたい。
そんな中性的な彼に見つめられて、ときめかない人はいないんじゃないかな。
なんて思ってみる。
「李織、あんまり柚姫ちゃんにちょっかい出すなよー。アキがキレるぞ」
「ん。それは困る。」
という原田さんの謎の言葉に、李織さんはあたしから離れた。
なんで暁くんが怒るの?
そんなあたしの疑問を、原田さんは苦笑いで誤魔化した。
そんなときだった。
ピリリリリリ…
誰かのケータイが鳴った。
「あ。悪い、俺だ」
どうやら愁生さんのだったらしい。
「もしもし?アキか?」
えっ!
暁くん!?
確か、暁くんは実家の方に帰ってるからしばらく会えない、と原田さんが教えてくれた。
だいたいいつも帰ってくるのは突然で、いつ帰ってくるかはわからないらしい。