【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
…えっと、それはあたしにうつさせて早く治させようっていうこと……?
なんとなく複雑な気持ちでいると、優兄がかぶりを振った。
「それはダメ。あいつの家なんかに柚が行ったら食われる。一応釘は刺してあるけど、熱があるんなら理性を保てるか怪しい。」
「平気だろ。柚姫ちゃんは特別って感じだし。」
「…愁生、甘い。」
そこに李織さんまで口を挟んで、ああでもないこうでもないと口論を始めた3人。
いつまで経っても終わらなさそうな討論に見かね、ボードを取り出した。
そして書き込んだそれを、優兄に手渡す。
「えっ、何?えっと…“あたし、暁くんにお礼もしたいから、行く。”…?あの、お礼って何の?」
ボードの言葉に、優兄が不思議そうに尋ねる。
“この前のライブの時の。いろいろしてもらったから。”
「…じゃ、いいんじゃない?」
それでもまだ優兄が渋っているとき、李織さんは欠伸を噛み殺しながら言った。