【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
18階には一部屋しかないらしく、エレベーターを降りてすぐドアが目に入った。
緊張は、もはや最高潮で。
震える指で、そっとドアノブを引っ張った。
うわぁ………すご…。
中に入ってまず驚いたのは、玄関の広さ。
おまけにシックな雰囲気が、なんだか男の人らしさを感じる。
「…柚姫ちゃん?」
そんなとき、奥の部屋から気だるそうな暁くんが出てきて。
あたしは、かすかに胸が詰まったような苦しい感覚に陥った。
「…柚姫ちゃん、どうしたの?なんで俺の家が…」
あたしはあらかじめ出しておいたマグネットボードにペンを走らせる。
“優兄が教えてくれたの。それから、原田さんがこれ持ってけって。”
そうしてずっと手に持っていたカゴを暁くんに見せると、暁くんは面食らったような顔をした。
「オーナーが?」
“あと、看病しに来た。この前のお礼に。”
「え?ダメだよ、うつるから」
と言われてしまっても、もう来てしまったし、このまま帰るのもなんだか納得がいかない。