【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
あたしは、暁くんにニッコリと笑いかけるともはや強引に部屋に押し入った。
「柚姫ちゃん?風邪うつっちゃうって」
“いいから、病人は寝ててください。今日は、あたしに甘えて?あとキッチン借ります”
暁くんにそう書かれたボードを押し付けて、あたしはリビングの方に足を向ける。
「…わかった。ありがとう、柚姫ちゃん」
いつもの優しい微笑みを向けてくれた暁くんに胸の高鳴りを覚えながら、キッチンに入った。
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…よし、こんな感じかな。
原田さんから預かってきた卵粥を温め直し、あとは暁くんのところまで持っていくだけ。
にしても…
あたしは、キッチンを改めて見回した。
そのキッチンはすごく綺麗で、使われている感じがしない。
流し台には、いくつも栄養剤の空き瓶が乱雑に置いてあった。
暁くんって、ちゃんとご飯食べてないの…?