【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
ほかほかと湯気をあげるお粥を持って暁くんの寝室に行くと、ベットの上で本を読んでいた。
あたしのノックで顔をあげた暁くんは、いつもの優しい微笑みを浮かべて本を閉じる。
「ごめんね?柚姫ちゃんにさせちゃって。オーナー、何を持ってこさせたの?…へぇ、お粥か」
鍋の中を覗き込んだ暁くんは、なんだか嬉しそうだった。
やっぱりお腹すいてるのかな?
お粥を別の器に移し変えてから、れんげですくってフーフーする。
そうして、当たり前のように冷めると暁くんの口元にもって行った。
「えっちょ…?」
すると暁くんは目に見えて慌て出す。
どうしたんだろうと首をかしげると、困ったように笑う暁くん。
…あ!!
ようやくそのことに気付いたあたしまで恥ずかしくなる。
普通、ああやって食べさせるのって彼女がやったりすることなのにあたしったら…。
慌てて器を暁くんの手に押しやると、飛び出すように部屋を出ようとした。
そんなとき。
「…待って、柚姫ちゃん。」