【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
暁くんの、いつもとはどこか違う静かな声にあたしは胸騒ぎを覚えてた。
ゆっくりと振り向くと、真剣な顔の暁くんと視線が交わって。
あたしの胸騒ぎは、確かにその存在を大きくしていた。
そんなあたしの心配をよそに、暁くんは慎重に言葉を選びながら口を開く。
「俺、さ…。聞きたいことがあるんだ」
やめて、やめて。
あのことじゃないでしょ?
きっと、違うから。
落ち着いて…。
だって暁くんが知るはずがないから。
そう、大丈夫。
単なる思い込み。
ふぅ、と静かに息を吐き出してゆっくりと微笑みを繕う。
すると、暁くんはほっとしたようにほんの少しだけ力を抜いたように見えた。
そうして、再び真剣な表情に戻って丁寧に話し始めた。
「…君のこと、知りたいんだ。教えてくれないか」
あたしの…こと……?
教えることなんて、何もないのに。
今のあたしは、暁くんが見ているそのままなんだから。