【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…でも、兄貴と妹は整った顔をしているよ。」
う…、やっぱり…。
「…特技は?」
“何もないかな。料理なら少しできるよ。”
「確かにあのシチューは美味しかったね」
そう言って微笑んでくれる暁くんに、心臓がキュンってなった。
「…やっぱり、君と話していると気持ちが安らぐな。」
えっ…?
それはどういう意味なのかを尋ねる前に、あたしの体は暁くんに引き寄せられていた。
いつも以上に熱い暁くんの体温が、優しくあたしを包む。
風邪で荒くなった暁くんの吐息が、撫でるようにあたしの耳元をくすぐった。
「……――っ」
「…君といると、本当の俺が滲み出てくるみたいだ。」
本当の、暁くん…?
「そう。本当は自分勝手で独占欲丸出しで。カッコ悪い俺。」
耳元で、ふっと笑う暁くん。
かすれた声が何だか色っぽくて、ドキドキする。