【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
記憶を何年も何年も遡っていると、頭の片隅にずっとあった記憶にたどり着く。
まだあたしが幼く、母も優しかったあの頃。
あたしが風邪をひいて寝込んでいるとき、母は美味しい鍋焼うどんを作ってくれて、
そのあと美味しいハーブティーを淹れてくれたんだ。
あたしが美味しい、って言うと母は優しい微笑みを浮かべてあたしの頬を撫でた。
『柚の元気が出るなら、母さんいくらだって淹れてあげるわ。さぁ、起きたらまた淹れてあげるから少し寝なさいね。』
そう言ったお母さんの優しい顔を、今でも忘れることはない。
…そうだ。
あたしは、ボードに
“またキッチン借りるね。それとハーブティーってある?”
と書き込んで暁くんの部屋を後にした。
暁くんが言うには、右上の戸棚の中にあるとか…。
あ、あった。