【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
あたしがぼんやりと外を眺めている間に、いつの間にか四時間目は終わっていたらしい。
自習だったから良かったけど。
教科書を片付けて、手を洗いに席を立つ。
そんなときだ。
あたしの少し前を歩いていた、数人の女の子グループの一人がハンカチを落としていった。
あ、ハンカチ…。
しかも誰も気付いてない。
正直、人と接するのはまだ怖かったりする。
でも、怖いと感じる前にあたしは動いていた。
クイッ
ハンカチを落として行った子のブレザーを、ちょいっと掴んで引き留めた。
振り返った子は、確か…泉堂(センドウ)さん。
そんなことをしたのがあたしだったからか、少しビックリした顔をしている。
一緒にいた子たちも、何事かとあたしを見ていた。
それもそうだろう。
一度も関わったこともなく、クラスから浮きまくっていたあたしがそんなことをしているのだから。