【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「えっと…此花さん?どうしたの?」
泉堂さんの表情はきょとんとしていて、どこか困ったような顔をしてた。
そんな泉堂さんに、拾ったハンカチを差し出す。
「え?あ、これあたしの…。拾ってくれたの?」
コクリと頷くと、その途端に泉堂さんの表情は柔らかく、明るい笑顔に変わった。
「ありがとう」
あ…。
かわいい笑顔…。
その笑顔にあたしまで嬉しくなる。
“どういたしまして”
そんな意味を込めて、あたしは自然と笑い返していた。
それを見ていた彼女たちは、揃って大きく目を見開く。
「わ。此花さん…?」
「こ、此花さんが笑ってるとこ、初めて見た…」
え?
あたし、そんなに笑ってなかったっけ…。
っていうかそんなに驚くことなのかな。
どうしたらいいのかわからなくて首を少し傾げれば、泉堂さんが柔らかく笑った。