【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…それで、なんて読むんですか」
すねた子供みたいに、ぷいっと顔を反らして言われ、あたしはまた笑った。
そして自分の名前の上に“このはな ゆずき”と書き足してそれをまた彼に渡した。
「…このはな、ゆずき、ね。」
彼はそれを見て、ようやく満足そうに頷いた。
そしてボードの文字を消して、また何かを書き始める。
数秒後、ようやく見せてもらえたボードにはやっぱり下手くそな字で、
“俺は、桐野 暁”
って書いてあった。
…ん?
きりの…あかつき?
変わった名前だなぁ。
それが、一番最初の感想だった。
「…―――。」
「あ、今変な名前だと思ったね?」
「!?」
思っていたことを指摘され、驚く。
慌てて首を振るけど、ばれてしまったに違いない。
「まぁ、いいよ。俺の名前、よく間違われるから慣れてるし」
「―――?」
「これ、“あかつき”じゃなくて“あきら”って読むの」
…え。