【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
暁くんの優しさをそのまま表したような音色に、どんどん引き込まれて行く。
…でもやっぱり、久しぶりだからあまり上手く弾けてない。
ところどころ指がつっかえてしまう。
元々楽譜を初見で弾くということ自体が苦手だったのだけれど。
それでも、暁くんの作った曲はキラキラと輝いているように感じた。
なんだか、心の中が温かくなっていくみたいだ。
すっかり意識は曲に呑まれていた。
最後まで集中を切らすことなく弾き終えれば、暁くんたちの方から感嘆の声と拍手が上がった。
「へぇ、ホントに上手いんだね。びっくりした。」
「ね、言ったでしょ?」
愁生さんが言ったことに、暁くんは満足げに微笑んだ。
「ありがとう、柚。お疲れ様」
ピアノのそばまで歩み寄った暁くんは、にっこりと微笑んで優しくあたしの髪を梳く。
「とてもよかった。素敵な演奏をありがとう」
そうやってにこりと笑いかけられれば、ドキッと胸が高鳴った。
きゅん…って胸がくすぐったくなって。
頭が、ぽわんってする。
ああ、やばい。