【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





暁くんの優しさをそのまま表したような音色に、どんどん引き込まれて行く。




…でもやっぱり、久しぶりだからあまり上手く弾けてない。




ところどころ指がつっかえてしまう。




元々楽譜を初見で弾くということ自体が苦手だったのだけれど。




それでも、暁くんの作った曲はキラキラと輝いているように感じた。




なんだか、心の中が温かくなっていくみたいだ。




すっかり意識は曲に呑まれていた。




最後まで集中を切らすことなく弾き終えれば、暁くんたちの方から感嘆の声と拍手が上がった。




「へぇ、ホントに上手いんだね。びっくりした。」




「ね、言ったでしょ?」




愁生さんが言ったことに、暁くんは満足げに微笑んだ。




「ありがとう、柚。お疲れ様」



ピアノのそばまで歩み寄った暁くんは、にっこりと微笑んで優しくあたしの髪を梳く。





「とてもよかった。素敵な演奏をありがとう」




そうやってにこりと笑いかけられれば、ドキッと胸が高鳴った。




きゅん…って胸がくすぐったくなって。




頭が、ぽわんってする。




ああ、やばい。





< 186 / 450 >

この作品をシェア

pagetop