【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
ひぇっ…!?
顔を隠すのも忘れて、離れた暁くんの顔を呆然と見つめていたら、クスッて笑われて。
「うん。やっぱり、可愛い。」
自分の顔がひどく熱いことに気づいて、再び顔があげられなくなったのだった…。
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「…おい、誰かアレ止めてこい。なんだあの甘い空気。」
「…無理。」
聞こえてきたそんな台詞に、ハッと我に返る。
見れば、呆れた様子で優兄たちが紅茶を啜っていた。
「止めとけ。人の恋路を邪魔するやつはなんとやら、だ。」
そう言いつつも、原田さんも苦笑い。
「何か言った?」
暁くんは、いつもの爽やかスマイルを向けるけど、なんか黒いものが一瞬見えた気がした。
「ほらお前ら、歌詞やら何やら決めなきゃならないことがあるだろ。さっさとやるぞ」
そんな空気を止めたのは、いつものようにみんなをまとめる愁生さんだった。
暁くんもそれ以上は追及せずに、大人しく歌詞を考えにみんながいるテーブルに近づいて行く。
行く前に、忘れることなくあたしの頭を撫でて。
暁くんの手が乗せられた自分の頭を、あたしはそっと撫でた。