【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
沙夜ちゃん…。
沙夜ちゃんの後ろ姿を見送って、まだ残っている金髪青年を振り返る。
「(美少女たちの友情を壊したみたいで、なんだか罪悪感で苦しいよ。)」
「(よく言うよ。)」
「(サヨを日本に来るようそそのかしたのは君かな?お陰でキースは日に日に不機嫌になってね。怖いったらありゃしないよ。)」
「…沙夜を日本に来るようそそのかしたのは君かな?って言ってる。」
え…
突然後ろから聞こえた声に驚いて振り向くと、さっきまで寝ていた李織さんが眠そうに欠伸をしているところだった。
「(違うよ。沙夜に聞いたよ?無理やり許嫁を決めたんだってね?30のおじさんだったかな、相手は。まだ15歳の子にひどい仕打ちじゃないか?)」
李織さんは、暁くんが言ったことを丁寧に訳してくれた。
ってか李織さん、英語わかったの?というツッコミはあえて飲み込んでおく。
「(それは僕はよく知らないから。父さんが決めてきたことだしね?でもまぁ、サヨの幸せのためだよ。)」
沙夜ちゃん、それで家出したんだ。
それなのに連れ戻されちゃったなんて…。
暁くんが怒るのもわかる。
悔しくて、思わず唇を噛んだ。
「(さて、僕はもう退散させてもらおうかな。フライトに間に合わなくなるし。)」
「(ああ、そう。気を付けて帰りなよ。)」
「(ちっとも心が込もってないようだけど?)」
「(気のせいじゃないか?)」