【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「(へぇ。仮にも兄である僕にずいぶん冷たいじゃないか?)」
え…?
李織さんが訳したエドガーさんの言葉に、固まった。
エドガーさんって、暁くんの…。
「(義理だろ?それに俺はオルドリッジ家の人間じゃない。)」
「(そっ?まぁ、せいぜい今の偽りの自由を楽しんでおくといいよ。疫病神さん?)」
疫病神。
そう言われて、暁くんは爪が食い込みそうな程手を握りしめていた。
ちょっと待ってよ。
エドガーさんって、暁くんのお兄さんなんでしょ??
なのになんで、そんなひどいことを言うの??
ひどすぎる。
思わずあたしが二人の間に割り込もうとしたその時、先に動く気配があった。
「(…あんた、何様?)」
いつも眠そうで力のなかった李織さんの目は、キッと力強くエドガーさんを睨み付けていて。
抑揚のなかった声には、確かな怒りが滲んでいた。
「(いくら兄貴だからって、言い過ぎ。胸くそ悪いんだけど。)」
「(…何かな、君は?)」
李織さんがエドガーさんに何かを言ったのに対し、暁くんは李織っ!?と驚いて声を上げた。
「(あんたの弟の友人。俺、好きな奴がバカにされてるの見るの一番キライ。)」
「(へぇ、そう。それで?)」
「(俺、あんたキライ。撤回して。そして帰って。)」
なんとなくしか理解出来なかったけど、李織さんは真っ直ぐにお兄さんを睨み付けて、はっきりといい放った。