【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
暁くんのお兄さんと名乗った、エドガー・オルドリッジは4分の1日本人の血が入ったイギリス人らしい。
そこら辺は複雑な事情が絡んでいるので今は聞かないで欲しい、と懇願された。
ちなみにエドガー・オルドリッジが連発していたキースなる人物は、彼の実の兄なんだとか。
その彼が沙夜ちゃんの居場所を探しだして、ついさっきのような有り様だという。
「…お騒がせして、すみませんでした。」
「いや、お前さんは悪くないだろ。」
低頭した暁くんを、原田さんは慌てて頭を上げさせた。
「柚も、ごめんね。びっくりしただろう?」
うん、すごくした。
でも、暁くんが謝るのはおかしいと思う。
だから、躊躇なく首を振った。
「…それにしても、李織のあんなところ久しぶりに見たよな。」
あれからずっと睡眠中の李織さんの背中を眺めて、原田さんはぽつりと言った。
「えぇ、俺も何があったのかと思いました。」
「あの事件以来だよなぁ、あんな風に強い意思を持って人と接するのみたの。」
あの事件?
「李織って、昔はあんな風じゃなかったんですか?」
「いや?昔はもっと愛想のいい、よく笑う可愛い子だったよ。」
え…、想像できない…。
暁くんも同じことを思ったらしく、互いに顔を見合わせて笑った。
「それはもう、可愛くて可愛くてなぁ。よく女の子と見間違えられたもんだよ。その上、名前が“いおり”だろう?よくいおりちゃーんって呼ばれててな。」
くっくっく、と喉を鳴らして笑う原田さん。