【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「それに、そろそろ迎えは来るだろうと思ってたしね。…まさかエドガーが直接来るなんて思わなかったけど。」
一瞬、瞳に悲しそうな色を滲ませた。
それもそのはず。
お兄さんに疫病神、なんて言われてしまっては辛いのも頷ける。
「来ても執事のギルバートくらいだと思ってたし、ちょっと虚をつかれた。」
はは、と力なく笑う表情が痛々しい。
「…アキ。アキは疫病神なんかじゃない。」
「…ありがと。」
にっこりと笑みを浮かべた暁くんに、李織さんは眉を寄せた。
「信じてない?俺は本気でそう思ってるから。」
真っ直ぐに暁くんを見据える李織さんの目には、エドガーさんに真っ向から対立したときのような目力が、少しだけ宿っていた。
それを見て今度こそふわりと笑って、ありがとうとしっかりした声で言った。
こうして、小さな嵐は去っていった。
暁くんの、哀しい秘密の一部を残して…。