【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「それに、そろそろ迎えは来るだろうと思ってたしね。…まさかエドガーが直接来るなんて思わなかったけど。」




一瞬、瞳に悲しそうな色を滲ませた。




それもそのはず。




お兄さんに疫病神、なんて言われてしまっては辛いのも頷ける。






「来ても執事のギルバートくらいだと思ってたし、ちょっと虚をつかれた。」






はは、と力なく笑う表情が痛々しい。





「…アキ。アキは疫病神なんかじゃない。」





「…ありがと。」





にっこりと笑みを浮かべた暁くんに、李織さんは眉を寄せた。




「信じてない?俺は本気でそう思ってるから。」




真っ直ぐに暁くんを見据える李織さんの目には、エドガーさんに真っ向から対立したときのような目力が、少しだけ宿っていた。





それを見て今度こそふわりと笑って、ありがとうとしっかりした声で言った。









こうして、小さな嵐は去っていった。




暁くんの、哀しい秘密の一部を残して…。









< 225 / 450 >

この作品をシェア

pagetop