【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…―――」
ふるふる、と小さく首を振る。
「んん、そう…。」
少し残念そうに、暁くんは小さく笑う。
ごめんね、そんな意味を込めてじっと暁くんを見つめる。
その、あたしの視線に気付いた暁くんは人懐っこい笑顔を浮かべ、
「柚姫ちゃんは気にしなくていいよ」
優しく言ってくれた。
何も言っていないのに、暁くんはあたしの言いたいこと、伝えたいことをわかってくれる。
暁くんと一緒にいることが、あたしにはとても心地よかった。
「お…お待たせ致しました…」
そんな声に気付き、ぱっと顔をあげると先ほどの店員さんがトレイにティーカップ二つとサンドイッチの盛り付けられたお皿を乗せ、そこに立っていた。
ぎこちない動作でそれぞれの前にお皿とカップを並べる。
「ご、ご注文は以上でよろしかったでしょうか…。」
「ええ、どうもありがとう。」
にっこりと、まさにキラースマイルを浮かべた暁くんが言えば、店員さんはとうとう耳まで真っ赤になり、フラフラとそこを立ち去った。