【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「やれやれ。」
優兄を口でねじ伏せたらしい暁くんは、またあたしの隣に腰をおろした。
「ねぇ、柚。」
みっともないとは知りつつ、アイスのヘラをくわえたまま振り向いてしまう。
そんなことを気にする風でもなく、暁くんは微笑んだ。
「やっぱり、どれか1日くらいはどこか遊びに行こう。都合のいい日を教えてくれたら合わせるよ。」
なんかそれってデートみたいだ。
でもちっとも嫌ではなくて、むしろすごく行きたいと思った。
いつならいい?と暁くんはあたしの答えをじっくり待っていてくれる。
そこでまた、あっと閃く。
“じゃあ、来週の木曜日がいい。”
「うん、いいよ。」
どのみちその日は準備が整うまで、あたしが暁くんを担当するんだから。
ちょうどいい口実だよね?
楽しみだなぁ。
暁くん、どんな反応してくれるんだろう?
暁くんの誕生日を前に、あたしは心からその日を待ちわびていた。
まさか、あんなことが起こるとは微塵も思っていなかった。