【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





…でも、どうしてだろう。





あたしはそんな疑問を綴ったボードを暁くんに見せた。







“どうして歌のうまい人を探してるの?”






すると暁くんは、ああ、と言って苦笑いを浮かべた。






「あのね。俺、今仲間とバンドを組んでるんだけど…この間ボーカルが突然抜けちゃったんだよ」





…えぇ!?



ボーカルが!?






ボーカルは、バンドの顔とも言える存在だ。





そんなボーカルがいないともなれば困る。






「そいつね、遊びのつもりだったらしくてさ。俺らが本格的にデビュー目指してるって知った途端抜けやがってね。」





暁くんは、人差し指で自分のこめかみをトントン叩きながら言った。




「まぁ、そんなヤツに俺たちの演奏で歌ってほしくないからよかったんだけど」




暁くんのその姿が、大切なパートナーであり親友だった彼女と重なる。



そして、かつての、歌が好きだったあたしとも。




何もかも捨ててしまったあたしには、彼の姿はとても眩しく見えた…。






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