【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「粘った甲斐があったねぇ。よかったよかった。」
“ありがとう、優輝ちゃん。”
「いえいえ、良いのよー。」
約束通り、お礼にアイスをおごった。
一緒にトリプルを頼み、食べながら優輝ちゃんはずっと喋っていた。
その話が面白くてついつい聞き入ってしまって、アイスが溶けてしまい、最後は大慌てで平らげた。
「ごちそうさまです。さて、もう遅いし、帰ろうか。」
優輝ちゃんに言われて初めて、外が薄闇に覆われているのに気付く。
結構居たんだ、とびっくりした。
「明日、楠木いないんだって。自習だとラッキーだよねぇ。」
お店の出入り口に向かいながら、二人で歩いていた、その時だった。
あたしの忘れていた罰が、すぐそこまで迫っていたのは…。
「――――…此花 柚姫!!!」
突然響いた大声に、ビクリと肩が震えた。
今の、声は…。
忘れもしない。
3年前の、…
「あんたっ、何やってんのよ!!」
周りの喧騒なんて、聞こえない。
真っ直ぐに、あたしを睨み付ける彼女の存在だけが、あたしの意識の中にあった。
「柚ちゃ…ん?あの人、知り合い…?」
優輝ちゃんの言葉すら、もう耳に入らない。
「なんであんたが、そんな幸せそうに笑ってるのよ!!」
髪が少し短くなったことくらいだろうか、彼女の変化は。
それ以外は3年前と何ら変わらない。
いや、かなり大人っぽくなっている。
…――――モモ。
すぐに彼女だとわかってしまった。