【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
ふと、リビングの電気がついた。
「うわっ、びびった。なんだよ、いたなら電気くらいつけろよ…。」
京ちゃん…?
顔をあげなくてもわかる、幼なじみの声。
家にはあたし一人しかいないからと、いつも勝手に上がってくる。
「これ、母さんが持ってけって…、柚どうした?」
京ちゃんが近づいてくる気配がして、そっと顔をあげた。
「…ゆ、ず…!?おい、どうしたんだよ!!」
ぐっと、肩を捕まれて何度も揺すぶられる。
「おい、柚!!なんで、戻ってるんだよ…!?」
戻る…?
それから京ちゃんは、色々してくれたような気がするけど、覚えてない。
でも確か、あたしの体を力一杯抱き締めてくれたような気がする。
そして、泣いてくれた気がする。
あたしなんかの為に泣いてくれるなんて、京ちゃん優しすぎだよ…。
でももう、京ちゃんにも甘えない。
そう、決めたの…。