【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「君は、確か柚のお友達の…」
「泉堂 優輝です。」
「優輝ちゃん?素敵な名前だね。ところで、柚はまだかな。着いたってメール送っても全然返信ないし、出てこないんだけど…。」
背が低いわけじゃないあたしが、少し彼を見上げて一気に喋る。
「それどころじゃないんです!柚ちゃんが…柚ちゃんが…っ」
ポロポロ、と感情が一気に決壊して涙が止まらなくなった。
「…落ち着いて。柚が、どうしたの。」
先ほどまでの柔らかい口調ではなく、堅い声音が真っ直ぐにあたしに向けられ、泣き出したいのを堪えて必死に話した。
一緒に出掛けた先で、柚ちゃんが罵られたこと。
ビンタをされて、心が死んじゃったみたいだったこと。
その日から学校に来てないこと。
ようやく全てを話し終えたときには、あたしも落ち着きを取り戻していた。
「…そんなことが。」
暁くんの表情は苦々しく、悔しそうだった。
あたしが、しっかりしていれば。
柚ちゃんにも暁くんにも、こんな顔させなくて済んだのに…。
ギリッ、と歯を食いしばった。
「…ごめんなさい。」
「君が謝ることじゃないよ。」
「でも、あたしが…っあたしが!」
悔しい。
なにもできなかった。
大切な友達を、また守れなかった…!
「…柚は、素敵な友達を持っているんだね。」
え…?
「何を…」
「柚を友達と思ってくれるなら、明日、笑って柚を迎えてほしい。居場所を作ってあげて。俺が絶対に、柚を助けるから。」