【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
笑って、迎える…。
「柚には、それが一番の救いのはずだから。」
にこ、と笑った暁くんはそのままきびすを返して車に乗り込んだ。
「あの…っ」
「ん、何?」
「あの人、きっと春日井 桃佳(カスガイ モモカ)です!」
ずっと考えていた。
あの人をどこかで見たことがある、と。
それに気がついたのは、昨日の夜だった。
「春日井?君の知り合い?」
「…詳しくは、言えません。」
「…わかった、ありがとう。」
暁くんは、車でその場から走り去った。
柚ちゃんを、笑って迎える…。
ぎゅっと唇を噛んで、泣き出したいのを堪えた。
明日、会えるよね…?
柚ちゃん…―――。
遠く、青空を眺めて柚ちゃんの笑顔を思い出していた。