【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…っ~~~~~!!」
その瞬間、がばっと飛び起きていた。
………ゆ、夢…?
すごく怖い夢だった。
はぁ、はぁと息が荒い。
おまけに全身汗だくだ。
あたしは、いつの間にか眠っていたらしい。
時刻は、昼の2時を回ったところだった。
汗で気持ち悪い。
重い体を持ち上げて、お風呂場に行ってシャワーを浴びた。
多少はすっきりしたものの、夢の恐怖心が拭えなかった。
人殺し!!
あんな風に、優輝ちゃんにも言われてしまうんだろうか…。
濡れた髪も乾かさず、ぎゅっと足を抱えて座り込んだ。
その時、肩に触れる柔らかい感触。
水色の、大きなイルカのぬいぐるみだった。
「…っ」
ぎゅっと抱き締める。
暁くん…。
暁くんと過ごした日々が、走馬灯のように甦る。
初めて水族館へ連れていってくれた。
美味しいパスタをご馳走になった。
ライブを見せてくれた。
風邪をひいた暁くんの看病をした。
公園で、こんなあたしを好きだと言ってくれた。
全て、全部が大切な思い出だった。
暁くん、もう一度だけ、会いたいよ…。
そしたらもう、なにも望まない。
心を殺して、リセットして残りの罰を受けるから…。
…あたしは、こんなにも弱い。
胸が苦しくなったけど、やっぱり涙は出なかった。